2026/6/3
第4部ーAIと人手不足でサービスが薄くなる時代、信頼で選ばれ、繁栄し続ける企業の条件
前回に引き続き、「AIと人手不足でサービスが薄くなる時代、信頼で選ばれ、繁栄し続ける企業の条件」 第3部を書いていこうと思います。
前回の記事では、問い合わせ窓口の縮小や、解約しづらい導線、不具合への実質的な対応を避けるような体制など、
正当な不満や困りごとを抱えた消費者が、声を届ける前に疲れ果て、泣き寝入りさせられてしまう社会の変化について見てきました。
では、なぜ日本のサービスは、ここまで人の気配や温度を失いつつあるのでしょうか。
その背景には、単に「現場の人が不親切になった」というだけでは片づけられない、
働く人の不安定さ、正社員に集中する過密な負担、そして社会の高度化に伴って複雑になり続ける業務があります。
生活の安心を持ちにくいまま働く人。
息をつく間もなく判断と対応を求められる人。
そして、少ない人数で、以前よりはるかに複雑な説明と確認を担わされる現場。
そうした状況の中で、
本来は人と人との間に生まれるはずの配慮や責任感が、少しずつ削られているのではないか。
第3部では、2026年の日本でサービスが「温度」を失いつつある理由を、
雇用の不安定化、正社員の過密労働、業務の複雑化と人手不足という3つの観点から整理していきます。
前回の記事では、日本のサービスがなぜ「温度」を失いつつあるのかについて、非正規雇用の不安定さ、正社員への過度な負担、業務の複雑化と人手不足という観点から見てきました。
そこで見えてきたのは、サービスの冷たさは、単に現場の人の意識や能力の問題だけではないということです。
働く人が安心して働けない。
正社員も過密な業務に追われ、心の余白を失っている。
そのうえで、AIやシステム、複雑なルールに囲まれながら、顧客にも従業員にも負担が押しつけられていく。
そのような状態では、いくら表面的に効率化が進んでも、顧客体験は少しずつ冷えていきます。
そして、顧客も働く人も、企業に対してどこか安心できない感覚を持つようになっていくのではないでしょうか。
では、企業はこの流れの中で、どうすれば信頼を失わず、むしろ選ばれ続ける存在になれるのでしょうか。
第4部では、短絡的なコストカットではなく、顧客対応・人材活用・世代間の協力・企業が社会に届ける価値という視点から、これからの時代に「信頼で売上を伸ばす企業」のあり方を考えていきます。
もくじ
- じゃあどうすればいい?「信頼で売上を伸ばす企業」の設計
5-1. 短絡的コストカットが生み出す「信頼」の喪失
高い税負担、インボイス制度、物価高、人件費上昇という中で、企業はコスト削減に迫られています。
しかし、短絡的に「コストを削って利益を上げる」経営を選ぶと、見えない損失が生まれることがあります。
- 従業員のやる気が下がる
- 顧客体験が悪化する
- 信頼が目に見えない形で失われていく
その結果、いずれ売上も信頼も失う企業になってしまう…
ただ、多くの会社が、グレーな手段ギリギリで売上を上げ、純利益を残すことを主眼においた経営をしている中、
今の時代、その逆を行う会社が愛され、売上が上がり、結果として、顧客も、従業員も、経営者層も、株主も幸せになるのではないのでしょうか?
つまり、これはブルーオーシャン戦略と言えると思うのです。
5-2.AI時代の顧客対応に「人」の価値をどう残すか?心
「人はパンのみにて生くるにあらず」
ー『新約聖書:マタイによる福音書4.4』-
人は物質的に恵まれていれば、満足できる存在ではありません。
人と人との心の繋がり、快適な社会運営に参加しているという満足感と誇り、好意的で感謝を感じられる価値の交換、そんな心の栄養もとても大切で必要です。
しかし、現状では、AIチャットボットの導入や、電話窓口の複雑な分岐で、人と話す機会自体が大幅に削減され、冷たい印象が残りやすい状況です。
物質面だけ、しかもとりあえず充実、そんな状態になっています。
ですので、逆に顧客対応でも、ちゃんと人が接してくれる仕組みを上手く取り入れた会社のほうが好まれ、信頼され、その製品やサービスを購入する人が増えると思うのです。
HPにAIチャットボットを設置する事自体は、良いと思います。
ただ、最新のGPT5.2やGeminiなどと連携できていたとしても、人と会話して解決するほうが早く、的確なケースが必ずあります。
そのために、有人窓口への入口につながりやすい設計にしたり(「人と話したい」、と入力したらすぐに有人窓口につながるなど)、の利用者の立場にたった設計が必要です。
AIチャットボットを設定している会社には、その導入により、いかに人(自分たち)が仕事をしなくても済むように、自分たちの手間がなくなるように、という意図を感じ、なんだか、顧客としては軽く見られているという印象になりがちです。
そうではなく、あくまでも顧客側にも、いちいち人に問い合わせなくても、サイト上で自分で簡単に短時間で解決できた、という体験を提供するために設置するのは良いことだと思います。
5-3.国内だけで十分行える人手不足解消
そして、人手不足については、外国人を採用するより、氷河期世代をもっと積極的に採用するという方法もあります。
たしかに企業にとって、人生経験が豊富な氷河期世代を採用するのは、様々な抵抗感があるでしょう。
- 最新のIT技術を使った業務を滞りなく行えるのか?
- 年齢が高いとその分、給与を高く設定する必要があるのでは?
- 年上の部下は扱いにくい、接しにくい。
しかし、これらについては、それぞれきちんと考えれば、建設的かつ健全な解決策は必ず見つかります。順に見ていきましょう。
5-3-1.氷河期世代はITに弱いのか?
氷河期世代は、最新のIT技術を使った業務を滞りなく行えるのか?
こちらの疑問ですが、現在の中高年、氷河期世代の人々は、学生時代、あるいは新卒時代にすでにパソコンやインターネットが普及していた世代です。
現在までに、メール、ビジネスチャットツール、スマートフォン、オンライン会議システムなど様々な技術の進歩を吸収し、仕事に使用してきました。
若い人と比べて、慣れるまでにもたつくなぁといった印象を持つこともあるかもしれませんが、そうであれば、詳しい人(若者)が中高年の人々に教えればいいだけのことです。
ホモ・サピエンスの圧倒的進化の特徴は協力することです。
ー引用ーサピエンス全史 上 第2章 虚構が協力を可能にした、よりー
「だが虚構のおかげで、私たちはたんに物事を想像するだけではなく、集団でそうできるようになった。
聖書の天地創造の物語や、オーストラリア先住民の「夢の時代(天地創造の時代)」の神話、近代国家の国民主義の神話のような、共通の神話を私たちは紡ぎ出すことができる。
そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。」
ユヴァル・ノア・ハラリ. サピエンス全史(上) 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 . 河出書房新社.
それを世代を交えて行えば良いと思います。
5-3-2.年齢と給与をどう考えるか
年齢が高いとその分、給与を高く設定する必要があるのでは?
こちらは、例えば、コールセンターや接客業、窓口対応など、最初は全世代で同じ給与額からスタートであったとしても、経験や、しばらく(2,3ヶ月)働いてみてから、その人の人生経験を活かした素晴らしい対応が発揮されていれば、昇給していく、という方法を取るという方法もあります。
また、これは昭和時代の年功序列という考え方になりますが、私はこれは今でも残しても良い給与体系だと思っています。
なので、年齢が上がるほど、人生経験に応じて給与が上がっていく。
その分、仕事に対しての質も責任も上がる、というようにしていけば良いと思います。
このようにすることで、今の若い人々も、社内での年上の人々の人生や仕事の仕方を見ながら成長し、いずれは自分たちも社内は、あのような状態になっていくと希望が持てるような仕組みにしていけばいいと思います。
そして、人手不足問題に関連して、非正規雇用の人々の契約解除にまつわる考え方としては、やはり、その人々をきちんと自分たちと同じ生活と人生がある命として責任を持つ体制へと変更していくことが必要だと思います。
例えばそれは、非正規雇用(アルバイト、派遣、業務委託契約)で雇った人の仕事が社内で終了となり、社内でのその人々のスキルの需要がなくなってしまったような場合。
解雇や契約解除をする会社は、その人々の人としての尊厳に対する責任を持って、受け入れ可能な次の従業先を紹介していく、という方法です。
自分の命を使い捨てにされて、笑っていられる人はいないですよね…
だから、人の命も、自分や自分の家族の命と同様にきちんと大切にしていくのです。
こうすることで、国内の人手不足はかなり解消していくと思います。
5-3-3.年上の部下は本当に扱いにくいのか?
年上の部下は扱いにくい、接しにくい
これは、特に経営者自身がまだ20代や30代の若手の会社で起こりやすいことかなと感じています。
若くして会社経営ができる方々なので、能力も高く、情熱もとても強い方々です。
彼らにしてみれば、自分たちの感性と考え方で会社を大きくしていきたい!という気持ちに溢れているでしょう。
そこで、年寄から、説教臭いことを言われたり、人生経験を盾に上から目線で接せられることは耐えられないと感じたりするのではないかなと思います。
確かに、年上だからという理由だけでマウントを取ってきたり、言葉遣いが乱暴だったり、年下の上司を軽く見たりする人もいるでしょう。
けれど、だからといって一律に中高年以上の人々を会社から排除するのは、自分たちにとっても、デメリットが大きいと思うのです。
特に、これから経営者として、リーダーとしてビジネスをしている人、若くして管理職についている人には、知っておいた方が良い心理学があります。
それは、マウントを取ったり、最初から喧嘩腰だったり、コミュニケーションが取りづらいと感じる人々は、大抵何らかのトラウマを抱えています。
これは年齢は関係ありません。
このような人々はまずは、その心の傷を癒やす必要があります。
理想的には国や自治体で心の傷を癒やしてから社会に復帰するという体制が整うのが良いと思っています。
その他、若い人にとってはどうしても年上の部下が扱いづらいと感じる場面もあるでしょう。
しかし、年上の熟練の仕事人を排除したことにより、環境に対しても耐久性においてもバランスが取れた最高品質の技術が失われた例もあります。
若い人が、その技術を習得するのが難しかったり、効率的ではないと考え、なぜその技術体系なのかを深く理解せずに表面的な利得のみを考えて、方法を変更してしまう。
受け継がれてきた技術は古臭く、陳腐化している、効率が悪い、コストパフォーマンスが悪いとし、それを連綿と行ってきた年配者さえも否定する。
そうやって消えてきた技術には主に、建築系の技術が多いと思います。
しかし、連綿と伝わってきているのには意味があります。
煩わしい職人技が必要なのには意味があります。
例えば、日本の伝統的な木造建築には、湿度変化に強く、地震にも耐える工法が数百年の経験により培われてきました。
これらは一見非効率に見えるものの、日本の風土に最も適した技術でもあります。
大抵の場合、総合的に、そして長期スパンで見て、その受け継がれた技術で行っていく方法が最もコストパフォーマンスも耐久性や快適性においても、最良の結果となるのです。
そういった、連綿と受け継がれてきた思いやりとも言える智慧を、自分たちの代で、表面的な理由だけで否定してしまうのはとても危険な行為だと思うのです。
どの世代であっても、まずは、心を落ち着けて、対話をしてみてはいかがでしょうか?
目の前にいる人は、どんな思いや気持ちでその仕事を続けてきているのか、そしてその人の価値観だとどのようにその仕事は見えて(視えて)いるのか?
人ぞれぞれ、人生を歩む環境や状況は異なります。
なので、若くて優秀な人から見たら、なぜ目の前の年上の人が、今その仕事をしているのか、大きな疑問を感じたり、低く見積もって見てしまいたくなることもあるでしょう。
けれど、あなたが全く同じ状況で生きたとしたら、その人よりも良い選択を必ずできたのでしょうか?
それは、やってみないとわかりませんよね?
人それぞれ、生まれた境遇で、その人なりにベストを尽くして一生懸命生きているのです。
昭和のように年功序列の会社であれば、上司はほぼ自動的に年上でした。
そのため、人生経験から、部下に対しても、他角度的に見ることができ、今のような、仕事ができていても、本当にあるかどうかわからない会社都合や、会話を重ねずに上司との相性が悪いと上司が一方的に判断して、契約を打ち切るようなその人の命を脅かすような心無い対応をすることはあまりなかったと思います。
5-3-4.会社は、お金を儲けるためだけの存在なのか ?
効率、時短、生産性、会社は利益を追求するのが存在意義…
これ、落ち着いて考え直してみませんか?
急かされれば、心が荒れて良い仕事はできません。
何でも短時間で行えば、疲労が増えます。
生産性を過度に追求すれば、人として生きている意味が薄らいできます。
会社は、お金を儲けるためだけの存在ではないと思うのです。
その会社が社会に届けている、日常を便利に、豊かに、文明の進歩に貢献できる価値、そしてそれを享受した人々と進歩した社会で楽しく快適に人生を楽しむことこそが、最も大切なものなのではないのでしょうか?
それを健全な形で届けるときに、必要なコストを削減して届けることは、その価値の低減につながります。
そうやって届けられた価値は、企業側がコストを削減した「思惑」も消費者に届いてしまうと思うのです。
5-4.まとめ
AIが進歩したこれからの時代に、価値を高めながら成長し、繁栄し続ける企業には、共通する条件があると感じています。
- なぜ顧客体験が冷えてしまうのかを、現場の疲弊・仕組みの硬直化・責任回避の連鎖として捉え、丁寧にほどける企業
- AIを「人の代わり」に置くのではなく、顧客の自己解決を助けつつ、必要なときはすぐ人に繋がる導線を用意できる企業
- 人手不足の中でも、採用や配置を工夫して品質を落とさない体制を作れる企業
- 若手と中高年が学び合い、世代間の摩擦を分断ではなく戦力に変えていける企業
- 自社が社会に届ける価値を落ち着いて見つめ、経営バランスを取りながら健全な品質で届け続けられる企業
こうした企業は、顧客にも働く人にも安心感を生み、結果として「信頼で選ばれ続ける」状態をつくっていけるのだと思います。
モノやサービスが溢れる時代に、ただ、作って市場に出したら売れる時代とは違い、経営者層は、本当の工夫力が常に求められており、大変と感じる人もいらっしゃるかもしれません。
けれど、そういった工夫を楽しめるのも経営者の仕事の面白さだと思うのです。
AIに投げかけたら、素晴らしい提案や回答が返ってくることもあるかと思います。
しかし、人の頭で考えたものはAIにはない、温かみと人生経験が反映された唯一無二の結晶となります。
また、年を取ったら、社会参加がしにくくなる。
そんな社会を若いうちから見ていたら、自分の行く末が悲しさしかないように思うのです。
年令を重ねるごとに、社会への貢献度を増やして、物心両面で豊かになっていけるー
そんな社会のほうが、生きていて楽しいと思いませんか?
そして私は、これからの時代に信頼で選ばれ続ける企業とは、単に商品やサービスを売るだけではなく、そこに関わる人や利用する人の人生まで含めて、より良い循環を生み出せる企業なのだと思っています。
効率化やコスト削減が必要な時代だからこそ、削ってはいけないものがあります。
それは、人への敬意であり、誠実な説明であり、利用者が安心して選べる導線であり、その企業が社会に届けている価値を、きちんと伝える言葉と設計です。
どれほど良い理念や技術、サービスを持っていても、その魅力がホームページ上で伝わらなければ、必要としている人に届きません。
また、表面的に整ったサイトであっても、企業の姿勢や温度、信頼できる理由が伝わらなければ、価格や条件だけで比較されてしまいます。
だからこそ、これからのHPやLPには、見た目の美しさだけではなく、企業の価値観、顧客への誠実さ、サービスの魅力、そして信頼して選べる理由を、分かりやすく伝える設計が必要です。
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天野 木蓮
大学院、大手製薬会社およびバイオ企業で20年以上,研究職に従事した科学者。
新薬開発における品質試験、国内及びFDAへの申請資料作成、GLP/GMP対応などに関わってきました。
現在は、これらの経験を活かしたWeb制作とライティング(企業サイト設計/導線設計/SEO・AIに強い記事制作)、および科学コンサルタントとして活動中。
母として家庭を支えつつ、理系思考を活かした論理的な視点から、「地球と時代が本当に求めている智慧」をテーマに、自然・人・技術の調和を大切にしながら、持続可能な豊かな社会の実現を目指す情報発信を続けています。